2023.06.27
【人財採用】5つのポイント:1.「適正人員を算出する」
こんにちは。
ホテル旅館専門コンサルタントの坂本です。
「人材の流動化」が叫ばれて、
もう10年くらい経つでしょうか。
今回は、
「人財採用」についての5つのポイント
1.「適正人員を算出する」
2.「人財の成長を促す仕組みづくり」
3.「キャリアの出口を用意する」
4.「人財採用に必要なツールを準備する」
5.「適材適所を考える」
の
1.「適正人員を算出する」について、
解説したいと思います。
最近、コロナ禍が落ち着いて、
「新規開業」
の問い合わせが増えてきています。
しかも、
「異業種(宿泊施設運営経験なし)」
という方が、
非常に多いです。
この方々からの問い合わせ・質問で多いのが、
以下の3つです。
①開業までの全体スケジュール
②ホテルシステムやサイトコントローラー、OTA登録など含めたレベニューマネジメント
そして、
③適正な人員配置とコスト管理
です。
その中で、今回は、
③の適正な人員配置、
について、
書きたいと思います。
その前に、直接は関係ないのですが、
前提として、知っておいて欲しいことを、
以下に述べます。
複数の高級温泉旅館の支配人を
させていただいた経験で言うと、
ごくごく当たり前の話なのですが、
例えば、転職する時などがそうなのですが、
「外資系ホテル出身の方は、外資系ホテルへ」
「内資系大手ホテル出身の方は、内資系大手ホテルへ」
「旅館出身の方は、旅館へ」
が基本なのかと思います。
つまり、
「ホテルの専門職」
「旅館のマルチタスク(多能工化)」
についての、
「深さ」
と
「広さ」
の関係なのかと思います。
外資系ホテルも内資系ホテルも、
一度配属された部門で、
専門性を高めるトレーニングを積み重ねます。
フロントであれば、フロント含めた周辺業務、
レストランであれば、レストラン含めた周辺業務、
というように、専門性を高めます。
小規模ホテルであれば、
部署を横断してマルチタスクをすることも、
「ない」とは言えませんが、
基本は、数ヶ月、数年での他部署への移動は、
あまりありません。
旅館で働く、となると、
正直、
上記のホテルである程度まで行った方でも、
過去の経験が、ほとんど役に立たない
ことが多いです。
逆に、
旅館である程度の経験を積んだ方も、
ホテルでも働くことは可能でしょうが、
ホテル独自のルールや、
「どこ出身(職歴)」をお伝えすると、
旅館は、下に見られることが多いです。
まあ、どちらに上も下もないのですが・・・。
さて、そんな業界にあって、
私は、あくまで、
「旅館」
を基準に考える経験を積んできましたので、
この視点で、
「適正人員」
を考えてみます。
結論から言うと、
「適正人員の答えは、施設により違う」
と言うのが、答えです。
ただし、
これでは、
「ふざけるな」
となってしまいますので、
旅館について、
大きく、いくつかの部署で分けて考えたいと思います。
旅館の概要を、以下の通り、仮設定します。
・業態:地方の高級温泉旅館
・客室数:20部屋(定員50名)
・20,50名規模の宴会場がある
・宿泊客・日帰客向けのレストラン
(4人がけ5テーブル、2人がけ5テーブルの合計9テーブル30席)
・大浴場あり(男女各1)
・売店あり
と仮設定の宿です。
まず、
フロントです。
これは、
「8時間3交代+支配人1名」体制で
考えると、
夜勤も含めて、1日4名必要です。
夜勤が2名必要であれば、1日5名必要です。
1ヶ月30日で、5名*30日=150名枠が必要です。
1名の勤務日数を22日計算すると、
150名÷22日=6.8名
ですので、7名必要になります。
急な欠勤なども考慮すると、
できれば、フロントスタッフとして、
8名は欲しいところですね。
そして、
個人的な意見ですが、
このフロントの人数は、
客室数とは、あまり関係ありません。
チェックイン時の端末数に左右される、
と考えています。
APAホテルさんのような、
大規模客室ビジネスホテルでは、
フロントチェックイン業務を人手で行うのであれば、
フロントに5人も10人も必要なのでしょうが、
(APAホテルさんは、1秒チェックインチェックアウトで
ATM化しているので、
実際には2-3人もいないと思いますが・・・)
100室を超えない限りは、
それほど、増やす必要がない、と思います。
ただ、
「高級旅館」
と言うことで、
「お客様との接客頻度を増やす」
のであれば、
1−2名を、その役割のために、
シフトインしておくことも、
必要な場合もあるかと思います。
そうなると、フロントだけで10名を雇用して、
随時6-7名が出社する、
と言うような適正人員になる、と考えます。
さて、続けて、
レストラン、です。
厨房に関しては、
この規模であれば、
朝食時間6:00-10:00:料理人1名、調理補助2名*30日=90名枠
昼食時間10:00-14:00:料理人2名、調理補助1名*30日=90名枠
夕食時間:17:00-21:00:料理人2名、調理補助2名*30日=120名枠
合計300名枠が必要になりますので、
出勤日数22名で割ると13.6名=14名必要になります。
ただ、料理へのこだわりや、
シフト組み、
レストランのバラエティなどによっては、
ここにパティシエが加わったりすることもあります。
さて、
レストランのホールスタッフですが、
これも本来であれば、
厨房との距離なども考慮する必要がありますが、
厨房がレストランすぐ裏にあると仮定します。
朝食:責任者1名、スタッフ2名*30日 = 90名枠
昼食:責任者1名、スタッフ3名*30日 = 120名枠
夕食:責任者1名、スタッフ4名*30日 = 120名枠
合計:330名枠
22日で割ると、15名となります。
余裕を見て、16、7名くらいでしょうか。
朝食が予約席制で、時間もある程度30分おきで
コントロールできるのであれば、
ホールスタッフは、もっと少人数でも可能です。
バイキングであれば、
厨房のライブキッチンスタッフが必要になりますので、
ライブキッチン人数を加えます。
その分、
ホールスタッフが、
基本は「料理出し」
「テーブル片付け」なので、
1-2名でも対応可能です。
高級旅館でのレストラン日帰りランチでしたら、
ほとんどが「予約」ですので、
この予約の時間をコントロールすることで、
1名での対応も可能です。
宿泊者の夕食ですが、
こちらも、
・客室提供
・レストラン個別提供
・レストランバイキング式提供
や、
・会席料理
・鍋・鉄板料理
などによって、シフトインする人員は変わりますが、
各スタッフ受け持ち2−3テーブル、
ドリンクスタッフ、デシャップや料理指示スタッフを合わせて、
4-5名、と言うところでしょうか。
夕食は、
ほぼ「予約制」
になりますので、
「当日予約」
を見込んだ上で、
適正人員を算出する必要があります。
さて、続いて、
「清掃スタッフ」
です。
外部委託する宿泊施設が増えておりますが、
自社スタッフでもできるようにしておいたほうが良いです。
でないと、チェックイン後のルームチェンジなどで、
「空室だけど、ちょっとデュベが乱れているだけ、
で販売できない部屋」
ができてしまいます。
トイレ掃除とベッドメイク、
くらいはできるようにしておきましょう。
(トレーニングすれば、早い方なら1週間でできます)
客室数が20部屋です。
高級旅館ですので、
客室の広さは、だいた30-70m2くらいでしょう。
30m2でしたら、1名60分
70m2でしたら、2名60分(あるいは1名100分)
くらいかと思います。
仮に、
30m2が10部屋、70m2が10部屋だとすると、
稼働率100%で、翌日も稼働率100%の場合でしたら、
合計1,600分(30m2*10部屋=600分 + 70m2*10部屋=1,000分)
を
チェックアウト後の10時からチェックイン前の14:30までの時間4.5時間=270分、
で割りますので、
3.7名=4名必要になります。
4名を毎日働いていただこうと考えると、
6名くらいを雇用する必要がありますが、
この場合、時間が限定的ですので、
パートさんを雇用することが多いです。
私の場合は、パートアルバイトさんを10名程度は雇用しておきます。
(人数が増えても増えなくても、時間での給与なので、
もしもの時を考えて、多めに雇用しておく)
上記以外に、
・施設維持管理スタッフ
・経理・総務・人事スタッフ
・大浴場清掃(清掃スタッフと掛け持ちが多い)
・売店スタッフ(フロントスタッフと掛け持ちが多い)
などが挙げられます。
また、
宴会などが多い場合は、
自社での対応が難しい場合は、
人材派遣でも良いですが、
可能であれば、
宴会時間を30分以上、
ランチ時間を避けて予約誘導することで、
レストランスタッフで対応するなど、
できるだけ、時間管理をすることで、
人員と作業の平準化を図ります。
これらを行うことで、
上記の宿泊施設では、
適正人員は、
支配人など管理職含めて、
「45名前後」
になると思います。
つまり、
高級旅館などの場合は、
「客室数 * 2 ≒ スタッフ人数」
になることが多いです。
(アマンのように1客室に5−6名、
と言うビジネスモデルもありますが、
これは人件費の安い国だからできることです。
またビジネスホテルは、もっと人員は少ないです)
おおよその目安として、
適正人員を算出する際の参考にしていただければ、
と思います。
次回は、
「人財採用」についての5つのポイント
2.「人財の成長を促す仕組みづくり」
について、解説します。
ホテル旅館専門コンサルタントの坂本です。
「人材の流動化」が叫ばれて、
もう10年くらい経つでしょうか。
今回は、
「人財採用」についての5つのポイント
1.「適正人員を算出する」
2.「人財の成長を促す仕組みづくり」
3.「キャリアの出口を用意する」
4.「人財採用に必要なツールを準備する」
5.「適材適所を考える」
の
1.「適正人員を算出する」について、
解説したいと思います。
最近、コロナ禍が落ち着いて、
「新規開業」
の問い合わせが増えてきています。
しかも、
「異業種(宿泊施設運営経験なし)」
という方が、
非常に多いです。
この方々からの問い合わせ・質問で多いのが、
以下の3つです。
①開業までの全体スケジュール
②ホテルシステムやサイトコントローラー、OTA登録など含めたレベニューマネジメント
そして、
③適正な人員配置とコスト管理
です。
その中で、今回は、
③の適正な人員配置、
について、
書きたいと思います。
その前に、直接は関係ないのですが、
前提として、知っておいて欲しいことを、
以下に述べます。
複数の高級温泉旅館の支配人を
させていただいた経験で言うと、
ごくごく当たり前の話なのですが、
例えば、転職する時などがそうなのですが、
「外資系ホテル出身の方は、外資系ホテルへ」
「内資系大手ホテル出身の方は、内資系大手ホテルへ」
「旅館出身の方は、旅館へ」
が基本なのかと思います。
つまり、
「ホテルの専門職」
「旅館のマルチタスク(多能工化)」
についての、
「深さ」
と
「広さ」
の関係なのかと思います。
外資系ホテルも内資系ホテルも、
一度配属された部門で、
専門性を高めるトレーニングを積み重ねます。
フロントであれば、フロント含めた周辺業務、
レストランであれば、レストラン含めた周辺業務、
というように、専門性を高めます。
小規模ホテルであれば、
部署を横断してマルチタスクをすることも、
「ない」とは言えませんが、
基本は、数ヶ月、数年での他部署への移動は、
あまりありません。
旅館で働く、となると、
正直、
上記のホテルである程度まで行った方でも、
過去の経験が、ほとんど役に立たない
ことが多いです。
逆に、
旅館である程度の経験を積んだ方も、
ホテルでも働くことは可能でしょうが、
ホテル独自のルールや、
「どこ出身(職歴)」をお伝えすると、
旅館は、下に見られることが多いです。
まあ、どちらに上も下もないのですが・・・。
さて、そんな業界にあって、
私は、あくまで、
「旅館」
を基準に考える経験を積んできましたので、
この視点で、
「適正人員」
を考えてみます。
結論から言うと、
「適正人員の答えは、施設により違う」
と言うのが、答えです。
ただし、
これでは、
「ふざけるな」
となってしまいますので、
旅館について、
大きく、いくつかの部署で分けて考えたいと思います。
旅館の概要を、以下の通り、仮設定します。
・業態:地方の高級温泉旅館
・客室数:20部屋(定員50名)
・20,50名規模の宴会場がある
・宿泊客・日帰客向けのレストラン
(4人がけ5テーブル、2人がけ5テーブルの合計9テーブル30席)
・大浴場あり(男女各1)
・売店あり
と仮設定の宿です。
まず、
フロントです。
これは、
「8時間3交代+支配人1名」体制で
考えると、
夜勤も含めて、1日4名必要です。
夜勤が2名必要であれば、1日5名必要です。
1ヶ月30日で、5名*30日=150名枠が必要です。
1名の勤務日数を22日計算すると、
150名÷22日=6.8名
ですので、7名必要になります。
急な欠勤なども考慮すると、
できれば、フロントスタッフとして、
8名は欲しいところですね。
そして、
個人的な意見ですが、
このフロントの人数は、
客室数とは、あまり関係ありません。
チェックイン時の端末数に左右される、
と考えています。
APAホテルさんのような、
大規模客室ビジネスホテルでは、
フロントチェックイン業務を人手で行うのであれば、
フロントに5人も10人も必要なのでしょうが、
(APAホテルさんは、1秒チェックインチェックアウトで
ATM化しているので、
実際には2-3人もいないと思いますが・・・)
100室を超えない限りは、
それほど、増やす必要がない、と思います。
ただ、
「高級旅館」
と言うことで、
「お客様との接客頻度を増やす」
のであれば、
1−2名を、その役割のために、
シフトインしておくことも、
必要な場合もあるかと思います。
そうなると、フロントだけで10名を雇用して、
随時6-7名が出社する、
と言うような適正人員になる、と考えます。
さて、続けて、
レストラン、です。
厨房に関しては、
この規模であれば、
朝食時間6:00-10:00:料理人1名、調理補助2名*30日=90名枠
昼食時間10:00-14:00:料理人2名、調理補助1名*30日=90名枠
夕食時間:17:00-21:00:料理人2名、調理補助2名*30日=120名枠
合計300名枠が必要になりますので、
出勤日数22名で割ると13.6名=14名必要になります。
ただ、料理へのこだわりや、
シフト組み、
レストランのバラエティなどによっては、
ここにパティシエが加わったりすることもあります。
さて、
レストランのホールスタッフですが、
これも本来であれば、
厨房との距離なども考慮する必要がありますが、
厨房がレストランすぐ裏にあると仮定します。
朝食:責任者1名、スタッフ2名*30日 = 90名枠
昼食:責任者1名、スタッフ3名*30日 = 120名枠
夕食:責任者1名、スタッフ4名*30日 = 120名枠
合計:330名枠
22日で割ると、15名となります。
余裕を見て、16、7名くらいでしょうか。
朝食が予約席制で、時間もある程度30分おきで
コントロールできるのであれば、
ホールスタッフは、もっと少人数でも可能です。
バイキングであれば、
厨房のライブキッチンスタッフが必要になりますので、
ライブキッチン人数を加えます。
その分、
ホールスタッフが、
基本は「料理出し」
「テーブル片付け」なので、
1-2名でも対応可能です。
高級旅館でのレストラン日帰りランチでしたら、
ほとんどが「予約」ですので、
この予約の時間をコントロールすることで、
1名での対応も可能です。
宿泊者の夕食ですが、
こちらも、
・客室提供
・レストラン個別提供
・レストランバイキング式提供
や、
・会席料理
・鍋・鉄板料理
などによって、シフトインする人員は変わりますが、
各スタッフ受け持ち2−3テーブル、
ドリンクスタッフ、デシャップや料理指示スタッフを合わせて、
4-5名、と言うところでしょうか。
夕食は、
ほぼ「予約制」
になりますので、
「当日予約」
を見込んだ上で、
適正人員を算出する必要があります。
さて、続いて、
「清掃スタッフ」
です。
外部委託する宿泊施設が増えておりますが、
自社スタッフでもできるようにしておいたほうが良いです。
でないと、チェックイン後のルームチェンジなどで、
「空室だけど、ちょっとデュベが乱れているだけ、
で販売できない部屋」
ができてしまいます。
トイレ掃除とベッドメイク、
くらいはできるようにしておきましょう。
(トレーニングすれば、早い方なら1週間でできます)
客室数が20部屋です。
高級旅館ですので、
客室の広さは、だいた30-70m2くらいでしょう。
30m2でしたら、1名60分
70m2でしたら、2名60分(あるいは1名100分)
くらいかと思います。
仮に、
30m2が10部屋、70m2が10部屋だとすると、
稼働率100%で、翌日も稼働率100%の場合でしたら、
合計1,600分(30m2*10部屋=600分 + 70m2*10部屋=1,000分)
を
チェックアウト後の10時からチェックイン前の14:30までの時間4.5時間=270分、
で割りますので、
3.7名=4名必要になります。
4名を毎日働いていただこうと考えると、
6名くらいを雇用する必要がありますが、
この場合、時間が限定的ですので、
パートさんを雇用することが多いです。
私の場合は、パートアルバイトさんを10名程度は雇用しておきます。
(人数が増えても増えなくても、時間での給与なので、
もしもの時を考えて、多めに雇用しておく)
上記以外に、
・施設維持管理スタッフ
・経理・総務・人事スタッフ
・大浴場清掃(清掃スタッフと掛け持ちが多い)
・売店スタッフ(フロントスタッフと掛け持ちが多い)
などが挙げられます。
また、
宴会などが多い場合は、
自社での対応が難しい場合は、
人材派遣でも良いですが、
可能であれば、
宴会時間を30分以上、
ランチ時間を避けて予約誘導することで、
レストランスタッフで対応するなど、
できるだけ、時間管理をすることで、
人員と作業の平準化を図ります。
これらを行うことで、
上記の宿泊施設では、
適正人員は、
支配人など管理職含めて、
「45名前後」
になると思います。
つまり、
高級旅館などの場合は、
「客室数 * 2 ≒ スタッフ人数」
になることが多いです。
(アマンのように1客室に5−6名、
と言うビジネスモデルもありますが、
これは人件費の安い国だからできることです。
またビジネスホテルは、もっと人員は少ないです)
おおよその目安として、
適正人員を算出する際の参考にしていただければ、
と思います。
次回は、
「人財採用」についての5つのポイント
2.「人財の成長を促す仕組みづくり」
について、解説します。