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2022.06.25

グランピング施設の注意5点

こんにちは。

ホテル旅館専門コンサルタントの坂本です。


最近、問い合わせの多いグランピング施設ですが、

事業再構築補助金の効果か、

船井総研さんの広告のおかげか、

異業種からの参入が増えています。

すでに、大小合わせると、

日本中で1000施設以上のグランピング施設があるようです。


さて、新規開業の問い合わせもいくつか頂いており、

注意点として、以下の5つを伝えています。

①コンセプト:「何を体験させたいのか=コンセプト」を明確にすること+演出を徹底すること


②空間:施設間の空間を、しっかりと確保して、向きなど顧客同士・従業員との視線を検討すること


③導線:顧客・従業員・取引先、人と車などの導線をしっかり区分けすること


④料理:基本はBBQですが、肉+野菜一辺倒は、コスト面含めてNGです。体験型の食事を検討すること


⑤体験:ハード完成はスタート、「体験などソフト面の充実」と「イベント感」を醸成すること



が生き残りのポイントになるかと思います

上記の5つのポイントは、ある意味、

既存のホテルや旅館でも同じことが言えますが、

特に「開放感」を求めているグランピング・アウトドア施設には、

より強く要望される内容です。


しかしながら、

私もいくつかのグランピング施設を体験しましたが、

満足に提供できている施設は、ほぼありません。


ただ、

「ドーム型テントがある」

「海・川・湖が近くにある(でも、行けない)」

「お隣さんの声が聞こえてくるし、トイレに行くたびにお隣さんから丸見え」

「安物の肉ばかりで、飽きる」

のような施設ばかりです。


新規開業でも、

色々な仕掛けや体験を提案するも、


「日本の失われた30年間を生き残ってきた企業は”遊び心=余裕”がない」


ことが1番のようです。


つまり、今、生き残っていて、事業再構築など、

新規分野に進出できる企業は、

「節約・我慢・忍耐・根性が好きな企業」

が多いため、

上記のようなことを伝えても、


「今までの価値観を否定することになり、理解できない」


ということのようです。


言うなれば、


「下請けで、部品作りを一生懸命やってきた会社に、子供向けのおもちゃを作れ」


ということでしょう。

(念の為、下請けで部品作りを一生懸命やってきた会社を否定する話ではありません。
素晴らしい会社かと思いますが、いきなり子供向けのおもちゃは作れない、という一般論です)


そんな施設が、溢れています。


経営者に話を聞いても


二言目には、

「儲かりますか?」

「儲かるにはどうしたら良いですか?」

という話です。

「長く儲けるために、上記の5つに注意してください」

と伝えても、


「???」


という感じのようです。


さて、上記5つのポイントについて、

詳しく説明します。


①コンセプト:「何を体験させたいのか=コンセプト」を明確にすること+演出を徹底すること

上述の通り、

「何のために作ったのか?」

「何をさせたいのか?」

「ここにあるべき施設は、どんな施設なのか?」

が、全く見えない、

「何となく、土地があるので、作りました」

というグランピング施設が多いです。

また、コンセプトは、美辞麗句を並べていますが、

実際に止まってみると、

「サービスも・施設も中途半端」

「体験は、シーズン以外は、おやすみ」

という、ことが少なくありません。


「ここに来たら、これを体験してください!絶対に損はさせません!」


くらいの気持ちで体験や料理を考えてほしいと思います。



②空間:施設間の空間を、しっかりと確保して、向きなど顧客同士・従業員との視線を検討すること

こちらも上述の通り、

せっかく大自然の中に、施設があるのに、


「そんなギチギチに詰め込まなくても・・・」


という施設が、あまりにも多いです。

少し散歩したくても、


「他のお客様から、丸見え」


ということばかりです。

せめて、


「向きを斜めにずらす」とか、


「段違いにして、テントからは見えないように工夫する」


など、考えてほしいと思います。


おそらく、下の導線含めて、敷地設計が、

ビジネスホテルや住宅・マンション設計の設計士ばかりで、


「土地活用の効率重視」


になっていると思います。


自分の施設を作る前に、

他の施設を視察するなり、

ちゃんと宿泊してみれば、

よくわかると思います。


③導線:顧客・従業員・取引先、人と車などの導線をしっかり区分けすること

②でも書いた通りですが、視線・導線を考慮することに加えて、

「人」と「自動車」の導線をしっかり検討する必要があります。


自動車が近くを走っていると、


「子供や老人・ペットが安心して歩けない・遊べない」


ということになります。

そうすると、せっかくグランピング施設・アウトドア施設に来ているのに、


「外へ出るのは危険」


ということになります。


オートキャンプ場もそうですが、


もう少し、車の動線と、人の動線を考える必要があります。


自由に走り回れる場所、を意識してほしいと思います。



④料理:基本はBBQですが、肉+野菜一辺倒は、コスト面含めてNGです。体験型の食事を検討すること

もう


「野外焼肉」


は、既存の施設に任せて、


「一緒に調理して、一緒に食事して、いつもはしない話を語り合う」


ことをしませんか。


そのためには、肉のみ、野菜のみ、では、


子供はもちろん、大人でも、すぐに飽きてしまいます。


そのために、わざわざ、近くの釣り堀へ行き、


道の駅へ行き、というのは、


結局、

「移動ばかりのグランピング」

になってしまいます。


と言っても、料理人がいない施設もたくさんあると思います。


そんな難しいものをする必要はありません。

・スキレット(16cm程度)+アルミ鍋
・キッチンタイマー
・鍋つかみ

があれば、

例えば、

アルミ鍋に、

ガーリックオイル + エビ + ブロッコリー

を入れて、スキレットの上にのせて、


キッチンタイマーで時間を指定すれば、アヒージョができます。


アルミホイルに冷凍餃子、冷凍焼きそばを入れて、

同じように時間指定すれば、これだけでも楽しめます。



⑤体験:ハード完成はスタート、「体験などソフト面の充実」と「イベント感」を醸成すること

これは、不動産関係の企業や、建設関係の企業経営者に必ずお伝えするのですが、



「ホテルのハード完成は、スタートです。ここから育てる必要があります」


ということです。

(昭和時代の)分譲マンションなどは、


「作れば売れた」


ということで、


多くの建設業者・不動産業者の経営者の方が、


いまだにこの認識で、ホテルを作るため、


「(ハード的に)良いホテルができた。あとは儲けるだけ」


という感覚の方が多い気がします。


「ホテルの完成は、スタート、ソフト面の充実を行うことで、育てていく必要がある」


つまり、ハードが古くなっても、

体験の充実や、料理のレパートリー、従業員の熟練度など

が上がっていくため、価格を上げることができる
(価格を下げないでも、お客様が泊まりに来てくれる)

ということです。

昭和の経営者の方は、

すぐに「ホテルの改装」をしたがりますが、

もう時代遅れです。


インバウンドは


「日本の手入れの届いた古い建築」


に価値を見出しています。


新しくすることは、


「逆に、価値を落とす」


ことになります。


グランピング施設は、


元々、ドームテントなどを見ても、


せいぜい10年くらいしか保たないようにできていますが、


相変わらず、日本は、時代遅れのまま、


「大量生産大量消費」


の価値観が残っている、と言わざるを得ません。


「10年後の、この場所に、あるべき姿」


を想像しながら、


「どのくらい育てられるか」


に取り組んでほしいと思います。


日本に、素敵なグランピング施設・アウトドア施設が、

さらに増えることを楽しみにしたいですね!